経営者インタビュー 第1回

長谷川シャッター工業株式会社
https://www.hasegawa-shutter.com/

テーマ
ドラッカーの使命経営を軸に
イノベーションで未来を拓く

「経営者出版®」のインタビューでは、いつまでも語り継ぎたい素晴らしい経営者の言葉をお伝えしていきます。
記念すべき第1回目は、三重県四日市市に本社を置く長谷川シャッター工業株式会社の取締役、長谷川 達智氏にお話を伺いました。
長谷川氏は、2019年~2020年にダイヤモンド社主催のドラッカー塾で共に学んだ私の大切なクラスメイトです。
ドラッカーの教えを誰よりも忠実に実践し、イノベーションを起こして業績を向上させている長谷川氏を心から尊敬しています。
今回は、その経営の秘訣をお伺いしました。

事業の歴史と進化

長谷川 達智氏は、三重県四日市市でシャッターの製造・販売・メンテナンスを行う長谷川シャッター工業の三代目社長です。
「私の祖父は昭和2年に大阪で建築板金業を学び、その後、三重県楠町で創業しました。父の代で薄い金属を加工する技術を生かし、シャッター製造へと事業を発展させました。そして昭和41年、私の生まれた年に長谷川シャッターが誕生しました。」
長谷川氏は35歳の時に3代目として会社を引き継ぎ、代表取締役に就任。約10年前から会社の発展に大きく貢献してきました。2023年10月に代表権を弟の長谷川 利敦氏に引き継ぎ、ご自身は取締役として新規顧客開拓を担当しています。

長谷川氏の経営の軸は、ドラッカーが提唱する「使命経営」にあります。
「私たちの使命は、工場・倉庫の労働環境に関するより良い相談ができる窓口を提供することです」。
この使命を実践するため、顧客の「真のニーズ」を理解することから始めました。
顧客の担当者は、シャッターのみを専門に扱っているわけではなく、他の分野の専門家がシャッターの修理やメンテナンスを依頼してくることがほとんどでした。
そこで、「シャッターのメンテナンスの手間をどれだけ私たちが引き受けられるか」に着目し、それにより顧客が本来の業務に専念できるようになることが「真のニーズ」だと気づきました。
「お客様が求めるものは、単なるシャッターの修理や交換ではなく、業務の効率化やトラブルの解決なのです」。

この「真のニーズ」に応える取り組みが、経営改革とイノベーションへとつながり、新規事業の創出や外部企業とのネットワーク構築という成果を生み出しました。
例えば、工場のシャッター修理を依頼する顧客の中には、シャッターの上の庇(ひさし)に鳩が止まり、納品予定の製品に糞が落ちるという悩みを抱えている企業がありました。
鳩除けネットの設置や忌避剤の導入など、建築鈑金業を仲間達の知識を生かした解決策を提案し、受注するようになったのです。
「お客様が気づいていない課題を私たちが先回りして解決する。これが私たちの価値提供の本質です。」
また、鳩除けネットの設置といった専門外の業務を依頼している外部企業との協力関係も広がり、協力会社からシャッターメンテナンスの依頼を受けることが増えてきました。

もうひとつ長谷川氏が重視するのが、局地戦での優位性を確保する「ランチェスター戦略」です。
長谷川シャッター工業では、ターゲットエリアを「片道30分圏内」と定めています。その結果、シャッターに不具合が発生した際、迅速に対応できるという強みを持っています。
また、無料の会員制度を導入し、顧客のシャッターメンテナンス用のカルテを事前に作成しているため、初めての修理依頼でも、必要なパーツを持参し迅速に対応できる体制を整えています。

今後の展望として、長谷川氏は2つの大きな目標を掲げています。
ひとつは、信頼できるパートナー企業と協力し、現在の四日市市・鈴鹿市中心の事業展開を、桑名市やいなべ市へと広げること。
もうひとつは、ドラッカーの使命経営やランチェスター戦略を学ぶ場を創出し、社員やパートナー企業と共に成長できる環境を作ることです。
「労働人口が減少する中で、工場や倉庫の保全スキルを持った人材の育成が急務です。そこで、若手技術者が塗装や補修の基礎を学べる研修機関を設立したいと考えています」。
単なる利益追求を超えた持続可能なビジネスモデルの実践こそが、長谷川氏の経営哲学と未来へのビジョンなのです。

Tips長谷川氏から学ぶ、語り継ぎたい経営のポイント!
✓ 顧客ニーズを掘り下げ、イノベーションを起こす。
✓ 有機的なネットワークの活用。
✓ 人の軸ではなく、事の軸で判断する。

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